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『いつまでも』 アンナ・ピンヤタロ 俵万智

いつまでも (主婦の友はじめてブック―おはなしシリーズ)

お母さんはいつまで僕のお母さんなのか。
いつまで僕のことを好きでいてくれるのか。
こぐまのオリの問いかけに、お母さんは「いつまでも」と答える。
「いつまでも」とは、いったい「どんな感じ」なのだろう。
この絵本の多くのページをさいて、お母さんは「どんな感じ」なのかを表現している。


子は産まれ出たときすでに母と切り離され別の「ひと」としての歩みをはじめる。
別の存在だと気づく頃には自由と不自由さの両方を抱えていることになる。
「愛された記憶がない」と真夜中、世界の片隅で語る成長した誰かでさえも、ほんとうの母の心を知ることは難しい。自分の心でさえも知ることは難しいのに、ましてや切り離された別のひとの心など、たとえ血縁者であっても難しいだろう、この頃は簡単に決めつけられ、済まされてしまうことも多いけれども。
最近のニュースによれば大阪・姉妹刺殺事件の彼も、母がどれだけ心配していたかを知ることはなかったという。家に帰らぬ日々を心配し、母はノートに書きつけている、「かえってこない、またかえってこない、かえらない…」と。家に戻れば素知らぬふりをする。だから彼は愛されていないと思い込んでいたのだ。事件後、母の残したノートを弁護士から見せられて、彼は意外そうな表情を見せたと報じられていた。彼も母の心を知ることはなかった。

「どうあるべきか」は何も答えてくれない。私たちはつねに「どうであるか」の場から始めなければいけない。たがいに不足し合い切り離された関係性のなかで、その隙間を踏み越えて行けるものは何か。幻想といえば幻想であり、本当といえば本当だ。「どうであるか」の向こうがわに控えている雑然とした中での伝えたい言葉、手繰りたいのはそこである。このお母さん熊のような子どもの眼差しまで添い下りて行く諦めないさまを、じつは、それ自体が子どもへの応答となっているのだ。本当にそのような感じなのかはどうでもよいことなのである。
子どもへ向かって描かれた絵本でもあり、その母に訊ねる絵本でもある。
やさしい絵と、俵万智さんの美しい文章と。

「いつまでもって、どんなかんじ?」
「ずーっと とおくて、みえないかんじよ」

それは、おおきな きが のびていく かんじで…。
ほしの そらが つづく かんじ。
あらしの かぜみたいに つよくて…。
ゆきみたいに わけが わからない。
きりみたいに つかまえられなくて…。
くもみたい に やわらかくて…。
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