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太宰治生誕100年の映画と、『津軽』の一節。

今年は太宰治生誕100年にあたる年だそうで、各地でイベントが催され、映画も3本、上映予定だそうです。



ヴィヨンの妻 (新潮文庫)公式HP/ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ
監督/根岸吉太郎
出演/松たかこ、浅野忠信
斜陽 (新潮文庫)公式HP/斜陽
監督/秋原正俊
出演/佐藤江梨子、温水洋一
パンドラの匣 (新潮文庫)公式HP/パンドラの匣
監督/冨永昌敬
出演/川上未映子、仲里依紗、窪塚洋介


前情報から。『ヴィヨンの妻』は、太宰文学に寄り添う感じ。『斜陽』は作品そのものを映している感じですね。『パンドラの匣』はまだよくわからないですけど、芥川賞作家の川上未映子さんが出ていますよ~。あと、松たかこさんとか! どう演じられているのか楽しみです^^

それで、太宰の地元の新聞(東奥日報)が、毎日せっせと太宰の小説を、ちょっとずつ載せてくれています。いまちょうどこの辺をやっています。↓

「要するに、」私の声は悲鳴に似てゐた。ああ、先輩作家の悪口は言ふものでない。「男振りにだまされちやいかんといふ事だ。ルイ十六世は、史上まれに見る醜男だつたんだ。」いよいよ脱線するばかりである。
「でも、あの人の作品は、私は好きです。」とMさんは、イヤにはつきり宣言する。
「日本ぢや、あの人の作品など、いいはうなんでせう?」と青森の病院のHさんは、つつましく、取りなし顔に言ふ。
 私の立場は、いけなくなるばかりだ。
「そりや、いいはうかも知れない。まあ、いいはうだらう。しかし、君たちは、僕を前に置きながら、僕の作品に就いて一言も言つてくれないのは、ひどいぢやないか。」私は笑ひながら本音(ほんね)を吐いた。
 みんな微笑した。やはり、本音を吐くに限る、と私は図に乗り、
「僕の作品なんかは、滅茶苦茶だけれど、しかし僕は、大望を抱いてゐるんだ。その大望が重すぎて、よろめいてゐるのが僕の現在のこの姿だ。君たちには、だらしのない無智な薄汚い姿に見えるだらうが、しかし僕は本当の気品といふものを知つてゐる。松葉の形の干菓子(ひぐわし)を出したり、青磁の壺に水仙を投げ入れて見せたつて、僕はちつともそれを上品だとは思はない。成金趣味だよ、失敬だよ。本当の気品といふものは、真黒いどつしりした大きい岩に白菊一輪だ。土台に、むさい大きい岩が無くちや駄目なもんだ。それが本当の上品といふものだ。君たちなんか、まだ若いから、針金で支へられたカーネーションをコツプに投げいれたみたいな女学生くさいリリシズムを、芸術の気品だなんて思つてゐやがる。」
 暴言であつた。「他の短を挙げて、己が長を顕すことなかれ。人を譏(そし)りておのれに誇るは甚だいやし。」この翁の行脚の掟は、厳粛の真理に似てゐる。じつさい、甚だいやしいものだ。私にはこのいやしい悪癖があるので、東京の文壇に於いても、皆に不愉快の感を与へ、薄汚い馬鹿者として遠ざけられてゐるのである。「まあ、仕様が無いや。」と私は、うしろに両手をついて仰向き、「僕の作品なんか、まつたく、ひどいんだからな。何を言つたつて、はじまらん。でも、君たちの好きなその作家の十分の一くらゐは、僕の仕事をみとめてくれてもいいぢやないか。君たちは、僕の仕事をさつぱりみとめてくれないから、僕だつて、あらぬ事を口走りたくなつて来るんだ。みとめてくれよ。二十分の一でもいいんだ。みとめろよ。」
 みんな、ひどく笑つた。笑はれて、私も、気持がたすかつた。太宰治『津軽』/青空文庫


またこんなことを書くから…、笑。
いやいや、ここは笑うところですよ。

芸術の気品など、このくだり、太宰をダシにして、私なりに展開したい誘惑にかられますが、他の短を挙げて、己が長を顕すことなかれ、人を譏りておのれに誇るは甚だいやし、汗。
そんなことより、、

生誕100年なんて、信じられない気持ちです。
太宰から返事を貰えるような気がしているのです。「君、あんなことを言っていたけど、勝手なことを書かないでくれ給え。僕はそんなこと一言も言ってやしないよ」、とか。私の手紙はその日のうちに届いて、翌日には返信が私のもとに届けられる、そんな妄想が、すごくリアルに…、フシギな作家ですね。これも、太宰のいいところの1つだと思います。
みんなのものである、ということは、誰のものでもない、ということになり、つまり太宰のひとり勝ちなのです。うーん、ずるい、笑。
分かってはいるけれど、それを作品として書いて残すなんて、そうそう出来るものではないと思います。色褪せない作品を残してくれました。
生誕100年の次は、200年ですか!?(あ、私は生きていない><)
ながい長い年月のあとに、太宰はどのように評され、受け入れられているのか…。
当時は目の上のたんこぶだった偉い先生方は、現在では残念ながら消えかけているけれど、ひょっとして太宰文学は200年後でもイケてる、かもよ。ルイ16世はやりすぎだとしても(笑)、抱いた大望は時とともに、ますます花咲いてゆくかもしれません。

「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」公式シネマ鑑賞読本
「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」公式シネマ鑑賞読本
津島家新座敷~太宰屋

comment

daza|
やはは!

映画の公式HPを見まして、ヴィヨンの妻は観たいなと思ってますが(松たか子好きなので)、斜陽はダメダメっぽいですよ~なんだか。

kairou|
daza さん、こんばんは~^^

小説は、柱・ト書き・セリフが要らないですよね。ほんとうに自由に書いてもよいと許されているジャンルなので、縛りが多い映画へと置き換えていくのは難しいと思います。たとえば具体的にロケハン出す場所はどこなのか、カメラをどう据えて、どう俳優さんに立ってもらうのか、そういうところから難しいですよね~。
なので、daza さんがおっしゃっているように、ヴィヨンの妻式でないと、太宰像とその作品から離れていく可能性、大です>< 

ヴィヨンの妻は、複合させて撮っているようすなので、ひょっとして太宰作品とは粗筋など変更アリかもだけど、ストーリーそのものよりも、全体的に「太宰」へと接近し、表現できていればいいわけですよね。
ところが斜陽の場合は、ストーリー中心で作っている感じがします。観てみないと分からないのだけど、予告編とかその辺を浚ってみると、そんな感じです。となれば、過去に作られた原作アリの映画群の幾つかが辿ってしまった、「違う!」にハマってしまうかもです、汗。

映画に置き換え難い小説っていうのは、抵抗しているだけ、小説としての魂みたいなものがあって、読んで良かったと思うのはストーリーとかそういうことでなく、その魂のことなんですよね。だからこの魂をスクリーンに映さなくちゃいけないのだけれど…、えっと、どこに柱を立てましょうか??笑。

太宰の小説は難しいと思いますよ~。
それだけ小説としてチャント作られているということだし、ペンの先から魂を注ぎ込んだという証拠でもあるし。

うーん、なんというか、まだ観てもいないのに、こんなこと言うのはマズいんですけど、やっぱり小説と映画は別物だと思って観た方がいいかもですよ~。だって、ガッカリするもん。

それと、どういう映画であれ、作ってもらえるだけ有難いかなぁ、って気もしていて。生誕100年の作家なのに、太宰と同時代の作家で、3本も続けざまに映画を作ってもらえる人なんて、あまり居ないのじゃないかなぁ、とか、思うんですけど。私としては、こんなふうに、じわじわと、賛否両論、交えながら、100年から200年へと繋げて貰えたら、嬉しく、ひそかに微笑みたい感じなのです。

あぁなんかいっぱい書いてしまいました。す、すみません。
でもこのネタちょっと振ってもらって、嬉しかったです^^
私言いたいこと、いっぱいあったみたいです。

松たか子ちゃん!^^

あ、もう1つ(さらに長いです)。
昔々、太宰の生涯を撮りましたみたいな映画をみたことがあります。まだビデオテープの時代に。タイトル忘れちゃったけど、あれは最低の映画でした。ただの自堕落な男として描かれていました。わざわざ津軽でロケしたふうな。津軽三味線なんか神妙にバックに流して。ふと思い出しました。

daza|
>~ストーリーそのものよりも、全体的に「太宰」へと接近し、表現できていればいいわけですよね。
>太宰の小説は難しいと思いますよ~。
それだけ小説としてチャント作られているということだし、ペンの先から魂を注ぎ込んだという証拠でもあるし。

まさにまさにその感じで僕も見てます。
「斜陽」の原作に近づけたいなら、その魂を表現するほうが成功するんじゃないかと。
「ヴィヨンの妻」のほうには うなづける切り口のテーマがありましたもんね。

最後にkairouさんが書かれていた最低の映画で思い出すんですが、 
太宰生誕百年記念に「うまれてすみません」を煎餅にして、
どうだ面白いだろう!と売り出した、いつかの某県のニュースにポリポリ、汗。でした。
これがけっこう売れてるらしいのが 同県民として歯がゆいところです。

kairou|
>まさにまさにその感じで僕も見てます。
「斜陽」の原作に近づけたいなら、その魂を表現するほうが成功するんじゃないかと。
「ヴィヨンの妻」のほうには うなづける切り口のテーマがありましたもんね。

でしょでしょ^^
daza さんの書き込みからなんとなく…。
記事内ではアッサリと書きましたけど、こりゃ書いてしまえとばかりに返信が長くなりました。

「斜陽」は、読んだことのない人へ向けての小説紹介みたいな感じになるのかなぁ。
まず時代背景を、きちっとやらないと、ずるずる、っと行ってしまいそうで…、軽い、感じに。「この人たちなんで追い込まれていったの?」ってところがヘソですね、たぶん。太宰は書き割りみたいにして書き込んだりはしないので、そこを監督さんが酌んでくれると有難いのですが、、、って観てもいないのに勝手なこと書き過ぎだけど><

あと過去の最低映画ですが、あれはたぶん生まれの呪縛から逃れられなかった太宰治を表現したかったのだろうと思います。うんと好意的に観ますと。しかしそれは評論家の視点であって、頭のずっと上から太宰を論ずることになるので、映画の出発点からしてすでにオカシイのではないかと思ったりして。もっとこう、グッと寄って、欲しいんですけど。太宰にぐーーっと寄っていって、内側から炙り出すみたいな、そんな感じになるといいのに~。

ん?
うまれてすみません煎餅ですか。そんなのもの出てるんですね。食べたい、食べたい! ←困った人、汗。

daza|
コレです⇓
http://www.hachinoheya.co.jp/index/dazai/sinbunkeisai.html

kairou|
おお、これは、どうコメントしていいのやら・・・。
太宰ファン歴33年とか言われてしまうと、手足を縛られ動けなくなり^^;
daza さんの真似して、私も「ポリポリ、汗。」です。

daza|
あはは・・・ポリポリ、でしょ。
コメントしなくていいですよ~


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オノ・ヨーコ『世界一受けたい授業』柔軟・視点・自由・愛だね

ただの私(あたし) (講談社文庫)

テレビをつけたら、オノ・ヨーコさんが出ていました。

日テレ『世界一受けたい授業~イマジン!ひとりひとりが出来る ラブ&ピース2009』。

ジョン・レノン&オノ・ヨーコの思い出はいっぱいありすぎて書ききれないくらいですが、すこしでも音楽をやってきた連中はみんなここを通ってきたと思うので、私もまたそのうちの1人なので、個人的な思い出はいずれ書くとして、まずはテレビについて。

メンディングピースとは?
この壊れた陶器をみんなで一緒に元に戻そうというパフォーマンスです。これによって、世界を修繕しようというメッセージを発しています。この壊れた陶器は世界みたいなもので、みんなが一緒に直していけば直るのです。

一緒に作業をする、もうそれだけで何かしらの効果がありそうです。たとえば嫌いな人と一緒に作業するのは大変だけど、目の前の壊れた陶器という単純なピースをどう組み合わせていくのか、単純なだけに、複雑に込み入った「嫌い」の気持ちが交通整理されて、同様に単純な関係に戻って行くかもしれないし。理屈じゃなくて、本能に近いところから、交通整理されていくような感じがします。

コンフォート・チェアとは?
イスを使った事のない人が初めてイスを見た時の行動とはどんなものなのか。イスとコミニュケーションをとってみるというものです。

だいたい、なんでも知っていると遠目で腕組みし始めたところから老化現象ですよ(笑)。これはイス、あれは何、それはこういうもので、とか。勉強ができて真面目で上品な方ほど物知りですね。それをやめてしまおうと。私、イスなんか見たこともないの。そんな状態に持っていきましょうと。風穴を開ける行為に見えました。身のまわりを知らないものだらけにしてしまえば、行き止まりはないです。赤ちゃんに習いたいですね^^

他に、壊れた壷の破片を1つずつ受け取って、10年後に集まって一緒に修復しましょう、というのもありました。これはメンディングピースの応用型でしょうか。いま修復するのではなく、10年後と言っているところがミソですね。10年ひと昔とか言うでしょ。なにか変化があるのでは? もしも、あまり歓迎しないような変化が訪れているのだとすれば、ひょいと出てきた壷の破片を手にして、ああそうだと思い出してくれるかもしれないし。約束したから、それまで生きて命を繋いでおかなければなりません。言ってみれば10年後までアイラブユーを言い続けているようなものです。10年後の「あなた」を待っているよと言っているようなものです。たとえその10年後が実現しなかったとしても。小さな目的でも、目的があるだけで、生きるのが少しラクになるのじゃないかな。これも面白いなぁ、と思いました。

あとヨーコさんが言ってたことで、どんなにケンカしている相手でも、鼓動は一緒だと。視点を変えると世界も変わっていきますが、その視点の持ち方も、この目や頭や体だけでなく、もっともっと、いろんな視点の持ち方があるのだなぁ、と思いました。
たまたまつけたテレビでしたが、ヨーコさんが出ていて、つい最後まで見てしまいました。
オノ・ヨーコの名前は大き過ぎてハンパない色眼鏡でウジャウジャですが、昔々、ジョン・レノン&オノ・ヨーコの曲、書籍、インタビュー記事などなど、片っ端から、あたっていった、私内データバンクによれば、それら、まったく気にしておりませぬ。芸能ニュース的にはゴシップ満載でタタキ甲斐のある大物ではありますが。シンプルに、オノ・ヨーコ、面白いじゃん^^

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