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芸道とは鬼だけの棲むところ

青空文庫の ウラ・アオゾラブンコ より抜き出します。

坂口安吾「太宰治情死考」昭和23年8月

 然し、こんな筋の通らない情死はない。太宰はスタコラサッちゃんに惚れているようには見えなかったし、惚れているよりも、軽蔑しているようにすら、見えた。サッちゃん、というのは元々の女の人のよび名であるが、スタコラサッちゃんとは、太宰が命名したものであった。利口な人ではない。編輯者が、みんな呆れかえっていたような頭の悪い女であった。もっとも、頭だけで仕事をしている文士には、頭の悪い女の方が、時には息ぬきになるものである。
 太宰の遺書は体をなしておらぬ。メチャメチャに泥酔していたのである。サッちゃんも大酒飲みの由であるが、これは酔っ払ってはいないようだ。尊敬する先生のお伴して死ぬのは光栄である、幸福である、というようなことが書いてある。太宰がメチャメチャに酔って、ふとその気になって、酔わない女が、それを決定的にしたものだろう。(中略)
 太宰のような男であったら、本当に女に惚れれば、死なずに、生きるであろう。元々、本当に女に惚れるなどということは、芸道の人には、できないものである。芸道とは、そういう鬼だけの棲むところだ。だから、太宰が女と一しょに死んだなら、女に惚れていなかったと思えば、マチガイない。


「元々、本当に女に惚れるなどということは、芸道の人には、できないものである。芸道とは、そういう鬼だけの棲むところだ。」

ここが特に。太字で書きたいくらいです。
せめて恋愛していればよかったなぁ・・、と思ったりしました。

明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子
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ジョセフ・チェン アリエル・リン『イタズラなKissII~惡作劇2吻~』どんな命にも進むべき道と、輝ける場所がある。

イタズラなKissII~悪作劇2吻~日本版サウンドトラック(DVD付)


台湾ドラマ『イタズラなKiss 惡作劇之吻』の続編です。

「どんな命にも進むべき道と、輝ける場所がある」

IQ200 のクールな天才・入江直樹(ジョセフ・チェン)は、「頭の悪い女は嫌いだ」と第1話で言い放っていました。外側の条件だけで相手を評価する社会の最前列に座していました。それが続編の最終回では、「どんな命にも進むべき道と、輝ける場所がある」のだと言っています。上と下に伸びるだけの直線の価値観から、全部を解放してそれぞれの「私」を生きることを選択し、またそれぞれの「私」を生きることを認めてもいます。琴子(アリエル・リン)を介してぐるっと一周まわって来たようです。琴子がいなければ一人前の男にはなれないとも言っていました。直樹ができる9割のことを、琴子はできないけれど、残りの1割では琴子に完敗します。その1割が、直樹の全体を整え、周囲への理解を促がし、人間的な深みを増してゆくための介添え役として必要だとも言っていました。

琴子と直樹の恋が実るまでを描いた前作(30話)と、
結婚後の2人の変化(成長)を描いた続編(33話)と、合わせて63話あります。
原作者の多田かおるさんが不慮の事故により、亡くなってしまい、作品は未完に終わっているけれど、このドラマ(台湾版)は原作に忠実に描かれているそうで、ドラマの最後には原作者への感謝の言葉も述べられていました。

イタズラなKissII~惡作劇2吻~ DVD-BOX1


直樹を心底愛する琴子の愛が、63話すべてを貫いています。
続編ではさらにこれを深め、愛からその命へと主軸を太く肉付けし、過去から現在、未来へと時を繋いでいます。
また前作と続編とを上手く絡ませてもいて(出来事や登場人物が交差します)、とてもよく出来たストーリー展開、構成だと思いました。
とくに直樹が変化してゆく過程において、要所でキッカケとなる(次の展開へと強く押し出す)出来事などが、納得できるカタチで配置され、あとで振り返ってみると、細部はとてもリアルな作りになっていました。

この続編の2人の成長記は、新たに主軸に加えた「命」を中心にして描かれています。
直樹が選択する職業はどれでも可能だけど、なぜか医師を目指すように原作者は配置しています。すでに前作の段階で。
医師だから、しぜんと話の矛先は「命」のまわりをまわってゆきます。
2人は新婚さんなので、子どもが欲しいと。これも「命」に関係しています。
後半になって琴子の実母の墓参りに直樹も同行するシーンが入ってますけど、琴子のバックストーリーを語りながら、同時に「命」についても語っているのです。

医師、子ども、実母の墓参りと、どれも成長するための要素を含ませつつ、じつは「命」について語っているのです。主軸から、離れないように。
寝てもさめても琴子の「入江く~ん」で始まったドラマが、その愛を実らせてどこへ行くのかというと、その愛っていうのは何かというと、「命」のことだと。「愛とは命のことだ」というのが、このドラマの真のテーマでした。

イタズラなKissII~惡作劇2吻~ DVD-BOX2


好きだ嫌いだ、またその解釈だと、それで終わらないところが『イタズラなKiss』の懐の深さです。こぞってリメイクしたくなる所以です。
しかもその命っていうのが琴子の愛に貫かれたそれだから、原始人みたいな純粋な姿で表出されるわけです。この肉体の内側にある命そのもので。

だから全体を見渡してみれば、計算され尽くされた話です。琴子のキャラだって都合よく意味なくトロくておバカなわけじゃなくて、「愛とは命のことだ」に繋げるために是非とも必要でした。テーマと人物が渾然一体となっています。多田さん、上手いです。

イタズラなKissII~惡作劇2吻~ DVD-BOX3


アリエル・リンちゃんと、ジョセフ・チェンさんが演じてくれたから、このドラマはなおいっそう輝いたのだと思います。
これから先も~版で作り直されて行くでしょうから、先回りして(笑)、ドラマをみて導かれた私なりの解釈を書いてみます。

まず琴子はカラッぽでないと、琴子じゃないと思います。
そのカラッぽのなかに、なみなみと注ぎ込んだ直樹への愛でいっぱいになっている状態が、こちら側に見えると「ああ琴子だ」と思います。
自分をよく見せたい女優さんであれば、カラッぽになるのが難しいのでしょう。日本ドラマ版がまさにこれでした。類型的な、ドジッ子で、ゼロにならなくちゃいけないのに、付け加えようとしています。それだとテーマに辿り着けないし、あるいはセリフ頼みで、なんとか、しのぐのか・・。だけどセリフなんて二の次じゃないでしょうか。文字を読んでいるわけではないので。空気感というか、佇まいというか、全体で理解するので。

アリエルちゃんは、ほんとうに上手く演じています。
このカラッぽな感じが良いです。
放送当時、台湾では高視聴率1位、社会現象化したそうですが、納得します。見た人はカラッぽな琴子の愛に癒されたのでは・・? 

直樹に関しては、こちらは劇的に変化して行きますけど、あの入江くんですから変化の仕方が難しいです。アリエルちゃんとは別の意味で難しかったと思います。

その前に、結婚前の直樹について。冷たい眼差しの天才だけど、そのまんまだと、ただの冷たい眼差しの人になってしまいます。琴子を介しての心の動きだとかを、冷たい眼差しのなかに直樹的に含める必要がありました。ジョセフさんは、繊細に演じていました。

それで変化の仕方ですが。結婚当初はあまり変わらなかった直樹が、たとえば離島に単身で行って働いて世の中を知り始めたりして、どんどん変わっていきます。自分と周りの人々との関係性が変化してゆきます。琴子を思う気持ちも変わってゆくのです。

吹き替え版で見た方は残念だけど、字幕で見た人は、私も字幕で見たけど、直樹の呼吸が聞こえました。ジョセフさんはセリフを言うまえに深く呼吸しています。その呼吸をマイクが拾っています。どういうことか。つまり包容力でもって世界を理解したい(まだ包容力は完全ではないけど、そう希望している)直樹へと、徐々に変化して行っている、という表現です。
とともに、表情やセリフの内容も変化し、よく見ると素直じゃないけど直樹的に相手を慰めたりもしていました。この慰め方は分かりにくいので琴子も気づいていないようす。でも直樹的には、どうにかして世界を包容力で理解したいような、そぶりが見ました。ジョセフさん、繊細な演技で、バッチリです。この「そぶり」と、呼吸と、よく表現されていました。ああ直樹だな、と思いました。

ところで、直樹は一般的な価値観から降りたけど、琴子はどうなのか。
直樹に惹かれた理由、天才のイケメンでスポーツ万能、これって一般的な価値観そのものでは?

最初はそうでした。でもラブレターを受け取ってもくれなかった初回から、直樹のほんとうの姿というか心をさぐっている様子でした。
あのラブレターが直樹の心に亀裂を作ったけれど、それは琴子もいっしょです。見た目や条件から始まった恋かもしれないけれど、琴子の心にも、「ほんとうは、どういう男の子なの・・?」、という、亀裂が入ったのでしょう。

長くなったけどもう1つだけ。
最後まで見て、なぜか耳に残ったのは直樹ママの声なんです。
琴子を呼ぶ声、「シャンチーン!」。

琴子の愛に貫かれたドラマだけれど、じつはその奥には直樹ママの愛が、あります。直樹は優秀だけど人間的に心配する(だから琴子に嫁に来てもらいたかった)、直樹ママの愛が、このドラマの底辺でずっと流れていました。母の愛が、次の世代の愛へと。これもまたテーマに基づいています。

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