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『太宰治 坂口安吾の世界 反逆のエチカ』(2)

回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1)


ん。太宰の死については私もちょろちょろと書いたけど、石川淳が、そのものズバッと書いている。しつこいくらいに書いてもよいのじゃないだろうか。俗に俗が流れて「そういうことにしよう」という一人合点が、鹿爪らしく語られて、まして抽出した気で法則みたいなものまでアッケラカンと、まじめな顔して語られてしまうと、さすがに苦笑せざるをえない。どうして「わかりません」と言えないのかな。人の生き死にも噛み捨てられる、ガムとおんなじで、物を動かすように人の生き死にを足りない思考であっちへ動かし、こっちへ動かし、こういう人を、昔は恥知らずと言った。モラルのないところにモラルを破壊する衝動はないのだから、衝動のないところに創造もないのです。おそろしいことに、ひとこと言うたび誰でも「私」を白状することになる。創造できないと白状している。口を開くたびに「私」を白状し、太宰を介して「私」の思考を白状し、どこまで行っても「私」を白状するだけで、太宰にはなかなか辿り着けない。その絶望感を抱えて「私」と「他者」を語るべきなのに、悪い意味での軽薄さで俗に俗が流れて行く。せめてあたりまえの地点に到達したい。安吾さんがよく言う「あたりまえのことですね」に到達できれば、絶望も少しは慰められる。

石川淳に戻ると、
太宰、生死不明の報道、彼はある酒場に寄った。青二才が太宰を噂していた。どうせ小説のタネにするのだろう、云々と。彼は腹立たしく、怒鳴ったという。

声のほうをふりむくと、どこのたれとも知らぬ青二才のしらじらしい横顔が眼にうつった。「バカ野郎。」とたんに、わたしはそうどなりつけていた。(略)わたしは非常に腹が立った。青二才のいいぐさが太宰君に対し、われわれに対し、人間一般に対してゆるしがたい侮辱のようにおもわれた。青二才はだまった。わたしもしばらくだまっていたが、やがて、青二才に向ってすまなかったといい、それが相手をなぐさめるような調子で、われながらやさしい声がしぜんに出た。(略)青二才はやっと解放されたていで、「ぼくは太宰さんの書くものは高く買っているのですが、あの生活はいけないとおもいます。世間ではそういうふうに見ています。」わたしはもうなにも耳に入れず、青二才の軽薄も、その背後にしょっていそうな「世間」の愚昧も、すべて心やさしく見て過ぎた。わたしの眼のまえにはただ太宰君の顔があった。(略)作者の死をめぐって、「世間」の、すくなくともその一部の見解が「情死」であり「小説のタネ」であるということを知らされたのは、歯牙にかけるにもたりないことながら、道ばたで砂ほこりをあびせられたような災難にはちがいなかった。しかし、この「世間」の見解というやつも、ことによると太宰君の「道化」の幻術にかかったものかも知れず、またこの席に於けるわたしの仕打もいささか「道化」的であったかも知れない。(p42~)



心映えの記 (中公文庫)


「しかし、この「世間」の見解というやつも、ことによると太宰君の「道化」の幻術にかかったものかも知れず、またこの席に於けるわたしの仕打もいささか「道化」的であったかも知れない。」

そのものズバリです。
ここを掘り下げると、批評としては、興味深いものになりそう。

まずは太宰の仕掛けた幻術のいっさいを解体し、どのような作りになっているのかを明かさなければいけないし、そこからもう一度復元し、どのような効果が実際に認められるのかを、いちいちの段階において精査する必要がある。ところがこのような視点で見たり、掘り下げたりはせずに、ただヤミクモに世間の感覚だけでバッサリとやってしまうから、世間の見解で終わってしまい、批評としても、まったくつまらないものになる。

批評するなら、少なくとも太宰を読まないといけない。青二才は太宰を読んでいないと思われる。作品を買っているなら作者がどう生きようと文句はなかろう、恩師でも親友でもないのに。だからこの場合の「買う」は消費者としての「買う」という意味でしかなく、文脈で言いたいところの「買う」、読者として才能を認めているという意味ではない、ということが、わかる。消費者は、小説を読まない。消費するように楽しむ。それでよいのだけれど。そのわりには偉そうに、家族でも恋人でもないのに、「わからない」とは言わずに、「あの生活はいけないとおもいます」などと、平気で言う。

「青二才のいいぐさが太宰君に対し、われわれに対し、人間一般に対してゆるしがたい侮辱のようにおもわれた。」

人の生き死にも噛み捨てられるガムとおんなじで、現在では、もしかすると、総消費者化しているのかもしれない、と思ったりする。

『太宰治 坂口安吾の世界 反逆のエチカ』(1)
回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1)
心映えの記 (中公文庫)
太宰治・坂口安吾の世界―反逆のエチカ


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