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『贋金つくり』アンドレ・ジッド

「でも、その宙ぶらりんの立場ほど長続きするものはないのよ。それを解決しようとするのが、あなたがた小説家の仕事じゃない?

人生では、何一つ解決なんかしないわ。みんな続きなの。
いつまでも不安定な状態から抜け出せず、最後まで、どうしたらよいかわからずじまい。
その間も、まるで何事もなかったように、人生は続いて行くんだわ。そして、そのことも諦めてしまうの、ほかのこと……、すべてのことと同じように」



背徳者 (新潮文庫)


私は『筑摩世界文学大系』で読みました。こちらはアンドレ・ジイド『ニセ金つかい』となっていますが、入手できそうな岩波文庫にならってタイトルをつけました。詳しい内容についてはこちらのサイト様の案内をどうぞ。

解説によると『贋金つくり』はジッドの失敗作ではないかという評価が一般的であるらしく、かしこい評論家や研究者の意見に相槌をうてば感想文もたいてい似たようなものになってしまうのだけれども、ジッド文学を考えるうえでこの作はハズせないという意見については、だれもが納得できるだろうと思われます。

一言で言うと、これまでの小説の書き方を見直して独自のスタイルを構築しようとした実験作です。
小説らしく書かれた小説しか読んだことのない読者には、ヒジョーに読みにくい、掴み難い小説であろうかと。だれと誰がどういう関係で、話はどこへ向かうのか、スジはどこにあり、なにを言いたいのか、などなど、ぞくぞくと不満が噴出しそうです。そこで先に引用したポーリーヌという女性の言葉。人生では何一つ解決などしない。最後までどうしたらよいかわからずじまい。彼女はそれを身に沁みるほど知っていて、諦めてゆくしかないとも言っています。だから小説家は、せめて小説のなかでは解決して欲しいし、小説とはそういうものでしょうと言っているわけです。
これに対してジッドの回答は小説全体で表しています。小説とはそういうものではない。だからこの小説は解決という解決は用意されていない。小説という狭い箱のなかに人生を押し込めることなく、読者と作者その両方にとって都合のよい変形を施すことなく、ありのままの人生そのすべてを表現しようとした小説である、というわけです。

狭き門 (新潮文庫)


となれば、小説は小説らしく書かれることに抵抗し、さまざまな人々の人生が意図なくバラバラに世界へと散ってしまうのは致し方のないことかもしれません。登場人物ひとり一人は会話も交わし、なんらかの接点を持ち、それなりに介入し合っているのだけれど、なんというかこの肉体の両脇をすり抜けて行ってしまうような不確かな関係しか持ちえていないような気さえする、いや今風に関係性が希薄だとか、そういうことじゃなくて。
私の人生の責任は、私にしか取れないというか、個々に生きるしかない、あたりまえの孤独をみんな抱えて生きているというか、そういう人々が、まるで夢物語のように、小説らしく、確実に関係を結ぶことはなく、掴まえようにもこの肉体の両脇をすり抜けて行ってしまうような、そこはかとない悲しみが、人生のすべてを表現しようとした、この実験作の底に流れているかのようです。

「そこで、ぼくは考えたのです。掟なしに生きることを認めるわけではないが、その掟を、他人からあてがわれることも認めないぼくは、どうやって掟を立てたらいいのか、と」

「その答は、簡単のようだな。その掟を、自分自身の中に見つけること、自らの進歩を目的とすることさ」



「見込みのある連中は、未知に向かって乗り出して行く者だけだね。はじめ、長い間、岸なんか、皆目見えないことを、覚悟していなければ、新しい土地など発見できやしない」



田園交響楽 (新潮文庫)


私という個人が1本の直線だとすると、その直線が四方八方から引き込まれているのが世界の姿であり、小説はそのまま書かれようとしているのだけれど、あくまでも個人としての1本の直線にこだわって描かれています。なので、その1本1本の直線が、より強く引かれることを望むかのような、小説の方向としては、そちらへ向かっているようでした。

とこのように感想文を書いてしまうと、茫漠とした世界が混乱してゴチャゴチャに描かれているのかと思われてしまうかもしれないけれど。そんなこともないです。いわゆるストーリーで見れば人物や事件はちゃんと推移しているし、小説の終わり方など劇的な効果を狙ってバッサリと切り捨ててあったりと、おそらく読者が退屈しないようにとの配慮でしょう、人生のすべてを描くと言っても構成は綿密に図られているわけです。そういう努力のあとが見えました。こういう小説を書くのは大変だと思います。それこそ長い間、岸など見えない、苦しい仕事だろうと、想像します。

1つだけ難癖つけるとすれば、各駅で止まらずに急行で行ってしまったような・・・、もっと書き込んで欲しかったような、小説を、ブ厚くして欲しいというか。
ひとり1人の人生が急行で行ってしまうから、その辺がちょっと物足りなかったような気がします。その分、端整な作りとなっています。これ各駅で行ったらもっともっと長い小説になっていたでしょうね。こってりと、濃い、無骨な小説に。


背徳者 (新潮文庫)
狭き門 (新潮文庫)
田園交響楽 (新潮文庫)

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