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『ルーゴン家の誕生』 エミール・ゾラ

ルーゴン家の誕生 (ルーゴン・マッカール叢書)


ルーゴン家の誕生 (ルーゴン・マッカール叢書)

エミール・ゾラ(1840-1902)について、前サイト に何本か記事を書きましたけど、「好き」、としか言えていないかも。そのわりにゾラが仕掛けたルーゴン=マッカール叢書のすべてを把握してるとは言えず、抜き打ちでどうなのかと問われたら、「さぁどうなんでしょう」と答えるしかない。なにしろあのバルザックの人間喜劇に相当するような、壮大な夢をゾラは描いていて、20年以上もの歳月をかけ心血を注いで、きちっと仕事を終えて死んでいったのだから(バルザックは未完だけど)、そう簡単に読みくだされて解ってたまるかと、もしかしたらゾラは、ボソッと言うかもしれない。

叢書はルーゴン家から出た一族が様々に枝分かれして、社会のあらゆる層に根を張っていく様子を各巻で描く構成になっている。(略)
ゾラはアデライード・フークを祖に、正式の結婚で得た子、愛人との間で得た子からの子孫の絆、均衡、同時代性が一目でわかるような家系樹を考案し、それぞれに生年と遺伝のタイプ、職業を記した。(略)
大革命前にはありえなかった小説とゾラが言うように、市民の誕生、上昇を中心に据え、四つの階層と特殊な階層に分類し、それぞれに典型的な職業、人物を割り当てた。
1 民衆……労働者、軍人
2 商人……パリ改造に乗ずる投機家、大企業
3 ブルジョワジー……成り上がりの息子
4 上層階級……政界の大物と結びつく官僚
5 特殊な階層……娼婦、殺人者、聖職者、芸術家
これをもとに9巻と最初の1巻、合わせて10巻を計画した。生理学、医学、心理学、歴史の本を多数読み、遺伝に関しては様々な組合せを図式化して、家系を作り出した。(訳者あとがき/393頁~397頁)


遺伝については過去記事にも書いたとおり、私は医学の勉強をしているわけではないので、ゾラが何を下敷きにして家系樹を作ったのかは問いません。書かれてしまった小説を読むだけです。
全20巻、人物再登場を使っているけど話は1巻ずつ完結します。必ずしも最初から順々に読まなくてもいいという。おかげで私の記事はあちこちトンでますが。

エミール・ゾラ(Wikipedia)
ルーゴン・マッカール叢書(Wikipedia)

くどくど書かなくても Wikipedia に書いてあって便利ですなぁ。

Wiki では第1巻『ルーゴン家の誕生』を、このように紹介していました。
「南仏の架空の町プラッサンを舞台に、ナポレオン派と共和派の争いを、少年シルヴェールの悲恋を絡めて描く。」
すっきりと言えば↑このとおりです。

先に書いておけば、この小説は売れませんでした(普仏戦争などの理由)。ゾラの名が世に知れ渡ったのは第7巻の『居酒屋』です。それでもこの人は諦めないで、1巻、2巻、3巻・・・とコツコツと書き続けました。その第1巻の書き出しはこうです。雰囲気を伝えたいので抜き出しが長くなります。

町の南方にあるローマ門からプラッサンを出て、市外区の最初の数軒を通り過ぎると、ニース街道の右側にこの地方でサン=ミットル平地(ひらち)と呼ばれている空き地がある。
サン=ミットル平地は長方形でかなりの広さがあり、街道の歩道に接してのび、踏みならされた帯状の草地というだけで道と区分されている。右側には、あばら屋の並んだ路地があり、その奥は行き止まりになっている。左側と奥の方は苔むした壁ニ面で囲まれ、その上にジャス=メフランの桑の枝が大きく頭をのぞかせている。広大な地所で、その人口は市外区のずっと下手にある。このように三方を囲まれた平地はどこへも通じない広場と同じで、散歩する人が歩きまわるだけである。
昔はここに、この地方で非常に尊敬されていたプロヴァンスの聖人、聖ミトルを庇護者とする墓地があった。1851年当時プラッサンの老人たちは、何年も前から墓地は閉鎖されていたが、まだ壁が立っていたことを覚えていた。その土地は1世紀以上にもわたり、死体を詰め込まれて死臭を漂わせるようになったので、町のもう一方の外れに新たに埋葬場が造られることになった。うち捨てられた旧墓地は春が巡るたびに不気味なほど密生した草木に覆われ、清められていった。ここの土壌は墓堀り人夫が鋤をふれば必ず何かしら人間の骨片をすくい上げるほどに脂ぎり、おそろしく肥えていた。五月の雨が過ぎ、六月の太陽を受けると、道路からも壁に雑草の葉先がはみ出して見えるのだった。内側は暗く深い緑の大海原で、大きな花々が点在し、際立った輝きを放っていた。その下の、隙間なく生えた茎の陰にある湿った腐植土が樹液を湧き立たせ、滲み出させているように感じられた。
当時この野原の奇妙なものの1つに洋梨の木々があった。枝はねじ曲がり、化け物のような瘤がいくつもあったので、プラッサンの主婦は誰一人としてその巨大な果実を摘み取ろうとしなかった。町では人々が不快そうに顔をしかめてこの梨の実のことを噂した。しかし市外区の悪童にはそんなデリカシーはなく、日の暮れかかる頃群れをなして外壁をよじ登り、洋梨の熟しきらないうちから盗みにいった。
たくましい雑草や雑木の生命力はやがて旧サン=ミットル墓地の死臭をきれいさっぱり吸収してしまった。腐敗した人体は花や果実にむさぼり尽くされ、ついにこの不浄の場に沿って歩いても、野生のにおいあらせいとうの鼻をつく匂いの他は何の臭気も感じられなくなった。これには数回の夏を要した。
この頃になって、町の人々は無用のまま眠っているこの公共の土地を利用しようと思い立った。街道と袋小路に沿った壁を打ち砕き、雑草と洋梨の木を根こそぎにした。それから墓地を移動した。地面を何メートルも掘り返し、地中から大量に吐き出される人骨を一角にまとめて積み上げた。(5頁~)


「聖なる地が俗化し、蘇り、新しいサイクルが始まった。まさに「ルーゴン=マッカール叢書」20巻の巻頭を飾るにふさわしい設定である。(訳者あとがき/393頁)」

視覚、聴覚、臭覚その他、刺激されて、プラッサンの地に放り込まれたような臨場感と、人骨が出てくる辺りで不穏な地鳴り、悪童が気にせず洋梨を盗むなど、まるで絞められた首筋に浮き出る青い血管のように生々しいのです。風景といっしょになって描写しています。ゾラが提唱した自然主義の方法なのでしょう。これを真似た日本のソレとはぜんぜん違いますね。書く前の準備段階で、ゾラがどれだけ駆けずりまわり、精魂込めて作り上げてきたのかを、垣間見るようです。
そういった先の展開を予感させる書き出しです。厚みのある、ながい長い影法師が、向こうから放たれて、その端を靴底で踏んでしまったような…。

上に抜き出した解説文には「四つの階層と特殊な階層に分類し、それぞれに典型的な職業、人物を割り当てた。」とあります。これまたすっきりと言えばこのとおりなのです。
だけども典型的な人物を、典型的に小説として書いたわけではなかったのです。架空の場を設定し、時と人物を配置し、そこへ遺伝の種を宿して、さらにゾラは先を見ていたのです。このあと10巻を予定していたのだから。唾棄されたとしても必然的に時代に絡むでしょう。典型的でありながら、「この人ひとりしかいない」極みまで持って行きたかったはずです。

この後、少年シルヴェールがやって来ます。彼女と待ち合わせをしているのです。彼女は13歳のミエット。「野良で血潮をたぎらせ働いているので、彼女は決してボンネットをかぶらなかった。(16頁~)」

シルヴェールは銃を持っています。夜明けに発ち、先の兄弟たちと合流するつもり。
「「今朝、知ったんだ」とシルヴェールは再び腰を下ろして、話し出した。「ラ・パリュードとサン=マルタン=ド=ヴォで蜂起した人たちが行軍を始め、昨晩アルボワーズで泊まったそうだ。僕たちも加わろうということになった。今日の午後、プラッサンの労働者の一部が町を出発した。まだ残っている連中はあす出発して兄弟に合流する」(15頁)」

ふたりは出発前までには別れるはずでした。ところが蜂起民の熱く荒々しい行進と、それを取り囲む歓声に沸いた民衆の波にのみ込まれ、恋人同士の甘い別れの様相は一変します。「がんがんと釘を肉体に打ち込まれるように鋭い音だった。そうした反抗の雄叫び、闘争と死への呼びかけは怒りに震え、自由への欲望に燃え、驚くべき虐殺と崇高な飛翔とが入り混じって、絶え間く、彼女の胸に響いた。さらに深く荒々しいリズムが伝わるたびに、ちょうど鞭打たれても姿勢を正して微笑む処女の殉教者のような官能的な苦悩を彼女に抱かせた。(37頁)」
彼女(ミエット)は、シルヴェールとともに発ちました。
「私に旗を持たせて、掲げていきたいの(41頁)」

『ルーゴン家の誕生』は、このふたりだけの話ではないです。
フランス革命のあと、立憲君主制、共和制、帝制、そして革命、クーデター、などなど。激動する社会において溺れまいと必死に生きるばかりの人々だけではなく、この機に乗じて旨い汁を吸い、肥え太るつもりで策をめぐらす輩もいるわけで。このあとも、いろいろあって(歴史的背景についても解説に詳しく書かれています)。
そういった人々が登場し、性格を露呈し、史実に絡めて、じつに巧みに小説は書かれてゆきます。ミエットが掲げた旗も、あとになって効いてきます。この旗はいったい何を意味しているのだろう…? 仕掛けにみちた、ゾラ渾身の、小説です。

(正直に書くと、この小説をマジメに記事として書くとすれば、呆れるほど長くなりそうなんです。どのように史実に絡めたのか、それは端折って書くとしても、第1巻だから枝分かれしていく根っこにあたるわけです。登場人物ひとり1人をそれこそ家系樹のように並べて、どのような「そぶり」が見えるのか、その辺を説明する必要があると思うんですけど。でなければ、この小説の感想文を書いたことにはならない、かもよ!? ゾラの感想文は書きにくいです。「好き」としか言えていない。)

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M|
昨日、地下鉄で、隣にすわった若い女性が「居酒屋」を読んでいました。ほとんど読み始めのようでしたが。

kairou|
その若い女性は10年前の(サバ読み)私です。。
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