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太宰治『鴎』戦争を知らぬ人は、戦争を書くな。

生誕100年記念のため、本屋さんは太宰の本だらけだった、とか。
お友達の記事 で読みました。

まだまだ読まれていないのだなぁと思う今日この頃です。
代表作は何かと最近訊かれたばかりなので、なおさらに。

文庫で読むなら、『きりぎりす』とか、どうでしょう。
太宰文学中期の、語り部の才あふれる作品集です。

きりぎりす (新潮文庫)


(太宰治『鴎』本文より)私は、兵隊さんの小説を読む。くやしいことには、よくないのだ。ご自分の見たところの物を語らず、ご自分の曾(か)つて読んだ悪文学から教えられた言葉でもって、戦争を物語っている。戦争を知らぬ人が戦争を語り、そうしてそれが内地でばかな喝采(かっさい)を受けているので、戦争を、ちゃんと知っている兵隊さんたちまで、そのスタイルの模倣をしている。戦争を知らぬ人は、戦争を書くな。要らないおせっかいは、やめろ。かえって邪魔になるだけではないのか。私は兵隊さんの小説を読んで、内地の「戦争を望遠鏡で見ただけで戦争を書いている人たち」に、がまんならぬ憎悪を感じた。君たちの、いい気な文学が、無垢(むく)な兵隊さんたちの、「ものを見る眼」を破壊させた。これは、内地の文学者たちだけに言える言葉であって、戦地の兵隊さんには、何も言えない。くたくたに疲れて、小閑を得たとき、蝋燭(ろうそく)の灯の下で懸命に書いたのだろう。それを思えば、芸術がどうのこうのと自分の美学を展開するどころでは無い。原稿に添えて在るお手紙には、明日知れぬいのちゆえ、どうか、よろしくたのみます、と書いているのだ。私は、その小説を、失礼だが、(私には、その資格がないのだが)少し細工する。そうして妻に言いつけて、そのくしゃくしゃの洋箋の文字を、四百字詰の原稿用紙に書き写させる。三十何枚、というのが、一ばん長かった。私は、それを、ほうぼうの職業雑誌に、たのむのである。
太宰治『鴎』(青空文庫)


(解説・奥野健男)中国戦線で死んで行く兵士の心を思い、小説をのうのうと書いている自分はいったい何なんだという、痛切な反省、そして芸術家として生き抜こうとする異常なまでの決意を、この随筆的短編に太宰はひそかにこめている。しかし童女の歌う「イマハ山中、イマハ浜」のように、守っているつもりで、時代にどんどん流されているのではないか。


『きりぎりす』のなかで、この『鴎』がもっとも優れているということではないです。最近のいろんなことを思い合わせてご紹介してみました。

戦争を知らぬ人は、戦争を書くな。

このひとことが、ピリッときます。
さまざまな思惑を込めて人々は常に動いて行きます、四方から吹き荒れる風のように。その風のなかで「私」はじっと耐えてよく耳を澄まして聴くことができるでしょうか。当時戦争を書いた人たちだって、よかれと思って書いているのです。でも太宰は遠慮してくれと言っています。よかれと思って書く人と、遠慮してくれと言う人と、どうして意見が食い違ってくるのか、そこには時代性が色濃く横たわっていると思われます。

時代性とは、四方から吹き荒れる風のようです。この風にさらされない人はひとりもいないでしょう。小説であれば書かれた作品はすべて時代の洗礼を受けているでしょう。それでも「私」はじっと耐えてよく耳を澄まして聴くことができるでしょうか。

君たちの、いい気な文学が、無垢(むく)な兵隊さんたちの、「ものを見る眼」を破壊させた。

文学だけでなく、兵隊さんだけなく、さまざまな思惑が、ものを見る目を破壊してゆきます。「私」の目が見るのではなく、時代性という得体の知れない何かが「私」の目になって見ていると錯覚させます。「私」の目はちゃんと見ているかもしれないのに。現在も変わらずに。

反省、生い立ち、デカダン、青春文学、などなど、太宰文学を指し示す言葉はたいてい決まっていて、それを持ってして批判する向きもありますが、しかし、それこそ目に見えてハッキリと見える、ただのカタチを言い当てているだけではないかと思ったりしています。

「私」はじっと耐えてよく耳を澄まして聴くことができるのか、この問いかけが太宰文学の底のほうでキラキラと輝いています。まあ気障なところもあるけれど(笑)。太宰文学の魅力は、ここにあると私は考えています。
きりぎりす (新潮文庫)


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